2015年07月01日

会報誌第16号(3)

会報誌第16号の第3回目です。

 NPO法人メンタルケア鹿児島の平成26年度の活動実績をご紹介します。

@1年間の全活動実績
 
 「件数」
 ・カウンセリング:773件
 (女性:549件)
 (男性:224件)
 ・講演:60件
 ・委託事業:5件

 「対象者数」
 ・講演:2,560人
 ・委託事業:1,217人

A講演依頼内訳

 (1)演題別(重複あり)
 ・メンタルヘルス (心の健康):42件
 ・ストレスマネジメント (ストレス対処):48件
 ・コミュニケーション (対人関係):51件
 ・女性のメンタルヘルス:22件
 ・DV・セクハラ:7件
 ・子育て:10件

 (2)依頼元別
 ・国、県、市町村:36件
 ・民間企業:5件
 ・学校:9件
 ・その他:10件

B委託事業実績

 (1)カウンセリング業務
 ・地方職員共済組合鹿児島県支部
 ・九州職業能力開発大学校附属川内職業能力開発短期大学校
  (ポリテクカレッジ川内)
 ・南九州市役所

 (2)研修業務
 ・(公財)鹿児島県市町村振興協会
   (自治研修センター)
   新任課長補佐級研修「メンタルヘルス」(全6回)
   一般職員基礎研修「職場のメンタルヘルス」(全3回)
   新規採用職員研修(後期)「メンタルヘルス」(全9回)
 ・九州職業能力開発学校附属川内職業能力開発短期大学校
  (ポリテクカレッジ川内)
   メンタルヘルス研修「自分らしさと対人関係」(全1回)

【お願い】
NPO法人メンタルケア鹿児島では、賛助会員と寄付金を募集しております。

 ・賛助会員:年1回、1口 5,000円から
 ・寄付金:随時、任意額

@郵便振替: 01710−4−46189
  トクヒ)メンタルケアカゴシマ

A銀行振込: 鹿児島銀行 真砂支店 普通 720745
  NPO法人メンタルケア鹿児島

posted by メンタルケア鹿児島 at 10:22| 会報誌

2015年06月30日

会報誌第16号(2)

会報誌第16号の第2回目です。

            「モラハラについて思うこと」

 モラハラの一つに精神的DVがある。夫による無視・怒鳴る等、経済力のない妻への「食わせてやっている」という言葉、共働きであっても「俺の方が多く稼いでいる・子どもの事は母親がするもの・俺の母親は「嫁」の仕事と文句言わずにやっていた」等と言って家事・育児・自分の身内のことに無関心という態度もそれに当たる。しかし被害者はこうして否定されても「自分が悪いのかも」というマインドコントロールに似た心理を抱くため、自分の身に起こっていることがモラハラ(精神的DV)だと気づくのが遅れ長期化しやすい。そのため、被害者だけでなく子どもにも深刻な影響を及ぼす。日本は「妻が夫に従う・部下が会社や上司に忠誠を誓う」などモラハラを容認しやすい文化といわれる。二つの共通点は、被害者に「自分が悪いのかも」という心理にさせる点と加害者の外面がいいという点である。加害者は家庭以外でそんな言動はとらず、部下に平気で言うことを自分より上の者には言わず違う顔を見せる。「モラハラ?またそんなくだらない事。住みにくい世の中になった」「女性の部下を気軽にからかったり妻に強い態度ができた時代の男性は幸せだった」と思う人もいるだろう。しかしその陰に病むほど苦しんだ人のあることを想像してほしい。モラハラ加害者にならない為には「もしかしたら無意識でしてしまっているかも」と意識したり、丁寧なコミュニケーションが有効だ。例えば「これは何だ」ではなく「ちょっとこれについて教えてくれるかな?」などのように。
 さらに最近では立場の上下がない同僚や学校でのいじめ、ネットの悪口被害などのモラハラ相談が増えている。背景には核家族化による子育て伝承のなさと子育てを母親が一人で担って手が回らないといった余裕のなさ等による家庭の教育力低下があり、基本的習慣を身につけていないことが多い。また親がある程度の経済力を持ったことで助け合うための人との関わりが減ったことに始まり、困った時もネット検索で事足りてしまう等、生身の人間との接触体験がどんどん減っていることも一因ではと感じる。そのため人との距離感や人とぶつかった時の対処がわからず過激な反応や深い傷つきとなり、それがさらなる攻撃となる。こうした「加害者」の背景には自分は大切にされていないという思いからくる自信のなさやイラつきがみられる。大切にされていると感じるためには本音を聞いてもらえる人や場が必要である。本音を抑えていると本音の出し方がわからず親友もできにくい上、本音の行方はネットやスマホでのむき出しの悪口にもなりがち。家庭の教育力が低下した現代では家庭の他にも子どもに関わる人や場がある「子育ての社会化」が必要と感じる。
 もしモラハラに遭ったら@これってモラハラ?という感覚を大事にするA相手を理解しようとする気持ちを捨てるB自分を卑下する気持ちを捨てるC自分らしく生きられないことが何よりも辛いと認識するD公的相談機関や女性センターに相談するという対策を。

                NPO法人メンタルケア鹿児島 理事 嵩原裕子

posted by メンタルケア鹿児島 at 10:36| 会報誌

2015年06月29日

会報誌第16号(1)

会報誌第16号を発行しました。
3回にわたって、その内容を掲載します。
今回は、第1回目です。

 NPO法人メンタルケア鹿児島の1年ぶりの会報誌をお届けします。
 NPO設立以来、毎日毎日を過ごしているうちに、気がつけば8年半が経過しました。振り返るとそれなりに苦悩し、試行錯誤しながらの日々でしたが、あっという間の年月でした。真砂でスタートし、高見馬場に移転し、事業形態も少しずつ工夫しながらこうやって続けてこられたのは、ひとえに多くの方々に支えていただいたおかげです。心から感謝いたします。
 昨年の4月には消費税が上がり、しばらくの間日本全体が消費を控える傾向になりました。4月になって、カウンセリングの予約が例年と比べるとぐんと落ち込み、その理由がひょっとしたら消費税のせい?と根拠もなく思いながらもいろいろと反省したり、見直しをはかったり、でもどうしようもなくという日々を過ごしました。例年なら忙しくなるゴールデンウィーク明けになっても状況はあまり変わらず、時間的には余裕のある日々でした。この時間を活用しないのはもったいないと開き直り、新しい知識を吸収する時間、自己研鑽に励む時間を与えられたとプラスに考えるようにと努力しました。世間でも消費がまた動き出したと言われた6月になって例年通りのペースで予約が入ってくるようになり、ホッと胸をなでおろしました。まさか、消費税増税がこんなに影響するとは予測してなかっただけに、新たな経験そして考える機会になりました。
 カウンセリングに来られる方は、身近な人間関係に問題を抱えていらっしゃる方ばかりです。人間関係は相手があるだけに、自分一人の努力では解決できません。それぞれがそれぞれの価値観を持ち、その人なりの常識を持っています。お互いの「普通」「常識」が違う時、会話は通じなくなり、共感も受容も困難になっていきます。その状況を、原因が自分にあると考える人もいれば、原因を相手にあると考える人もいます。前者は相手を不快にさせないようにと努め、後者は相手に自分の不快感をいかにして伝えようかと努めます。決して交わることのない、心落ち着かない関係が続くことになります。
 最近、ある芸能人の離婚問題をきっかけに、マスコミで「モラハラ」という言葉を目にする機会がふえました。「モラハラとは?」という情報がテレビやネット、雑誌や本でも紹介されるようになりました。真面目に取りあげているものもあれば、揶揄しているかのようなものも見受けられます。マスコミの反応やネット上の反応を見るたびに、まだ社会での「モラハラ」に対する認識度はこんなものだったのかと愕然とさせられます。「モラハラ」だけではなく、「セクハラ」「パワハラ」「DV」などに対する認識も同じような程度なのだと感じています。
 「ハラスメント」を起こしている当事者は、自分の言動が相手にどういう気持ちをさせているかという視点を持っていません。そこにあるのは、自分の価値観や、やり方や考えをただひたすら相手におしつけようとする自己中心性です。彼らは自分自身が被害者意識にさいなまれていることも少なくありません。自分が相手に不快な思いをさせられ、どんなに損な役回りをさせられているか、迷惑をこうむっているか、どんなに我慢させられているかという思いでいっぱいになり、そういう思いをさせる相手に対し怒りを感じ、攻撃的になります。
 攻撃を向けられた相手からすれば、「なぜ?」とわけの分からない状況です。その状況
を不快にあるいは怖いと感じながら日々を過ごすことになります。勇気を持って「怖い」「嫌だ」と伝えても、すんなりと伝わることはありません。逆に「普通では」考えられないような言い訳やすり抜けが平然と返ってきます。話題をすり替え、正当性を主張し、攻撃してきます。繰り返し、そういうことがおこなわれると、いつのまにか理不尽さを感じなくなり、相手の言っていることが真実であり、自分が何か欠けているかのような錯覚に陥っていきます。人としての尊厳を傷つけられ、穏やかな生活とは程遠い生活を強いられることになりながら、自分がもっときちんとできていればと自分自身を責め、でもなんとなく違うような気もすると混乱の日々が続きます。
 「私はモラハラの被害者なのではないか?」と思いながらも「本当にこれってモラハラですか?」と確かめるために、カウンセリングの予約を入れてこられる方は少なくありません。
お話を伺うと、相手の不快な感情をすべて「あなたが〜したから」「あなたが〜しないから」「あなたが〜だから」とこちらのせいにされ、納得しきれないながらも一部分が事実のために「私にも一因がある」と思い込まされているという状況が浮き彫りになってきます。他者視点を全く持てない人と、常に他者視点を持とうとしている人との組み合わせだと特に混乱が起こります。
 いつもいつも否定されていると、いつのまにかそれが事実であるかのような錯覚に陥り、冷静な客観的な判断ができなくなります。否定する言葉を浴びせられた時、第三者の視点を持ってみましょう。「友だちがそう言われたとしたら?」と考えてみると「そこまで言われることないよね」と思えます。感情をぶつけられている、人格否定をされている、変な攻撃をされていると感じることができます。
 それぞれがお互いの価値観や生き方、考え方を認め合い、理解しあおうとしている
関係では、ハラスメントは起きません。他者の気持ちへの想像力の欠如、対人関係能力の欠如がハラスメントを引き起こします。相手の言い分を聞いたうえで自分の意見を言う、もし相手とすれ違いが生じたら、きちんと話し合い、謝るところは謝るなどお互いを大事にすることができない人がなんと多いことか!
 対人関係は「勝ち負け」ではありません。自分自身を肯定できている人ほど、相手の話をきちんと聞くことができます。「だけど〜」「あなたは〜」「どうしてわかってくれないんだ?」「普通は〜」という言い方をよくする人、言葉で伝えずに雰囲気で伝えようとする人、その場では言わずに後で怒りを出す人、社会では「いい人」「穏やかな人」と評されているのに身近な人には感情を垂れ流している人は、自分自身を肯定できてないのでは?とふりかえってみましょう。自信満々に見えている人、プライドが高いと思われている人が実際には自己肯定感を持てず、実際の自分を見透かされないように虚勢をはり、相手を否定したり束縛したり支配したりして自分を保とうとしていることもあります。
 この関係はいやだなと感じたら、お互いを大事にできる対等な関係が結べてないのでは?と考えてみましょう。お互いのすれちがっている点を忌憚なく話し合えるのか?歩み寄りができるのか?もし、一方的な会話しかできないのだとしたら、その人との関係はつらいものになります。自分ができることは何かをさぐりましょう。必要以上の忍耐や我慢は不要です。
 もし、自分がハラスメント加害者になったら、即座に過ちを認め、心から謝罪しましょう。人格否定をしない、感情をぶつけない、頭ごなしに決めつけない、などコミュニケーションの基本を守りましょう。
 人は誰でも穏やかに暮らす権利を持っています。平和で穏やかな時を過ごせたらいいですね。


                 NPO法人メンタルケア鹿児島 代表理事 平川真理子

会報誌第16号(2)につづく
posted by メンタルケア鹿児島 at 11:46| 会報誌